ピアノとトランペットはドの音が違う
ピアノを弾く人、トランペットを弾く人が、ドレミファソラシドと弾くと実際に聞こえてくる音が違うのはご存じですか?知っている方も、はじめて知った時は驚かれたのではないでしょうか。
■トランペットとピアノの人にある〇音階の楽譜を渡し其々にひいてもらいます。
【ピアノ】
【トランペット】
【ピアノとトランペット 一緒に】
トランペットもピアノも同じ音で弾いている、不快な音やはもっているような音がしないことがわかります。絶対音感を持っている方は、ドレミファソラシド(ハ長調の音階)が聴こえましたね。
では、今度はそれぞれの楽譜を見て、楽譜を読んでもらいます
【ピアノ】
ドレミファソラシド
【トランペット】
レミファ♯ソラシド♯レ
あれ、違いますね。
ピアノの人はドレミファソラシドと書かれた楽譜をドレミファソラシドと思って弾いています。
トランペットの人は、レミファ♯ソラシド♯レと書かれた楽譜をレミファ♯ソラシド♯レと思い弾いています。ですが、実際に出ている音はドレミファソラシドなので、合奏すると同じ音が鳴ります。
移調楽器【ピアノとトランペットの記譜と実音】
楽譜(記譜) | 実際に聞こえてくる音(実音) | |
ピアノ | ドレミファソラシド | ドレミファソラシド |
トランペット | レミファ♯ソラシド♯レ | ドレミファソラシド |
トランペットの楽譜は、ピアノで弾く、ドレミファソラシド(ハ長調:♯や♭のついていないドから始まる調)を、レミファ♯ソラシド♯レ(二長調:♯が2つついているレから始まる調)と異なる調で書きます。
この様に、実際の音と違う調で書かれている楽器を移調楽器といいいます。
でも、なぜそんなややこしくて面倒なことをするのでしょうか。
【移調楽器】なぜ移調して楽譜に書くの?
それは、トランペットやホルンなどは、3、4つあるピストンの押して息を吹いて音を出しますよね。その時のピストンを押す指の運び方(運指)を簡単に、調号(♯や♭)を少なくして楽譜を読みやすく、さらに様々な楽器に運指の共通性をもたせ、別の楽器を弾くリスクを減らす役割があります。
ピアノと同じように、ドレミファソラシドと書かれていたら、指の動かし方も難しく、♯や♭のたくさんついたとりかかりにくい曲になり、難しくなり、トランペット、ホルン、サックス、様々な楽器の指の動かし方もバラバラで、ややこしくなっていたということです。
移調して書かれた楽譜は、消して面倒なものではなく、より簡単にスムーズにまとまるようにできている画期的なものという事になります。
トランペット(B♭)の音域(実音と記譜音)
トランペットの音域です(実音・記譜音)を楽譜にかきました。音域は2オクターブ半ほどあります。※A:楽譜の範囲 B:比較的楽に演奏できる音域
トランペット(B♭)を移調する方法
➀トランペット実音を、楽譜にかく場合は 長2度上げる
トランペットを吹いて実際に出ている音(実音)が ミ だった場合、長2度上げて
トランペットの楽譜には ファ♯ とかく
②移調した音を実音に読み直す場合 長2度下げる
トランペットに楽譜に書かれている音が ソ だった場合、長2度下げた
トランペットの実音は ファ♯
分かりづらいので、トランペットの音域で調ごと実音と記譜音を下記にまとめました。
※ Tp=トランペットの略号 Pf=ピアノの略号
実音:ハ長調 記譜:二長調
- 実音:【ハ長調】 ドレミファソラシド
- 記譜:【二長調】 レミファ♯ソラシド♯レ
ピアノの記譜&実音 トランペットの実音 |
ミファソラ シドレミ ファソラシ ドレミファ ソラシ♭ |
トランペットの記譜 | ファ♯ソラシ ド♯レミファ♯ ソラシド♯ レミファ♯ソ ラシド♯ |
ピアノやフルート等のC調の楽器が ハ長調の場合、移調楽器のトランペットの楽譜は♯2ケの二長調に移調され書かれています。
実音:へ長調(♭1) 記譜:ト長調(♯1)
- 実音:【ヘ長調】 ファソラシ♭ドレミファ
- 記譜:【ト長調】ソラシドレミファ♯ソ
ピアノの記譜&実音 トランペットの実音 |
ミファソラ シ♭ドレミ ファソラシ♭ ドレミファ ソラシ♭ |
トランペットの記譜 | ファ♯ソラシ ドレミファ♯ ソラシド レミファ♯ソ ラシド |
ピアノやフルート等のC調の楽器が ♭1個のへ長調の場合、移調楽器のトランペットの楽譜は♯1個のト長調に移調され書かれています。
実音:変ロ長調(♭2) Tp記譜:ト長調(♯1)
- 実音:【変ロ長調】 シ♭ドレミ♭ファソラシ♭
- 記譜:【ハ長調】ドレミファソラシド
ピアノの記譜&実音 トランペットの実音 |
ミファソラ シ♭ドレミ♭ ファソラシ♭ ドレミ♭ファ ソラシ♭ |
トランペットの記譜 | ファソラシ ドレミファ ソラシド レミファ♯ソ ラシド |
ピアノやフルート等のC調の楽器が ♭2個の変ロ長調の場合、移調楽器のトランペットの楽譜はハ長調に移調され書かれています。
※注意:画像でTp記譜ピアノの頭のミの音に♮がついているのは、トランペットの音域によるものです。
練習問題 トランペットの記譜と実音は何?
【問題1】 トランペットの楽譜です。トランペットで吹いた時に実際にでる音(実音)はなんでしょう。
答え
答えは レソシ♭ミ♭
トランペットは、ミラドファと書かれた楽譜をミラドファと思い吹くが実際にはレソシ♭ミ♭の音が出ている。
問題2 ピアノ伴奏付きのフルートの譜面です。トランペットの譜面に書き換えましょう。
【答え】
トランペットの楽譜では、 ファ♯ ミラ と書く。
実際にに聞こえる音(実音)は、 ミ レソ である。
問題3 吹奏楽のトランペットのパートをピアノで模範演奏します。何の音で弾きますか。
【答え】
ミ♭ ファ ソラ シ♭
絶対音感を持っている人には違和感のある移調楽器
絶対音感を持っている人には、この移調楽器は慣れるまで気持ち悪く感じるのではないでしょうか。
自分は「ドミソド~」と声に出して音を歌っても、違うからと言われてしまうからです。絶対音感の人からすれば、聞こえてくる音は実際ドミソドだから・・・となるので、移調楽器に伝えるには変換した移調した音で言わなくてはならないという事になります。
要するに、もし音名で歌ったとしたら(しませんが)ドと歌いながら、シ♭の音程で歌う音痴になるという事です。頭がおかしくなりそうですね。絶対音感を持っている人が移調楽器を始めるのは慣れるまで時間が必要になることでしょう。
絶対音感がすごい! けれど、必須ではない
絶対音感があった方が良いかもしれません。ですが、なくても楽器は弾けます、吹けます。
絶対音感を持ち合わせていないピアニストやバイオリニストもいます。かの有名なショパンコンクール優勝者の伝説のアルゲリッチは絶対音感を持っていなかったそうです。
必要なのは絶対音感ではなく、相対音感と言われています。ある音を基準にその音との高低差を感じる相対音感。相対音感は鍛えられます。絶対音感がないことをマイナスにとらえる必要はないのです。
トランペットとピアノのドの音が違う理由と音域、移調方法を詳しく解説のまとめ
■トランペットの記譜(記音)、実音
- Tp実音 → Tp記譜 長2度上げる
- Tp記譜 → Tp実音 長2度下げる
■トランペットの移調
Tp実音 | ヘ長調(♭1) | 変ホ長調(♭3) | 二長調(♯2) | ハ短調(♭3) | ト短調(♭2) | イ短調 |
Tp記譜 | ハ長調 | 変ロ長調(♭2) | イ長調(♯3) | ト短調(♭2) | 二短調(♭1) | ホ短調(♯1) |
毎回頭の中で移調するのは慣れるまで大変です。ハーモニーディレクターという自動で移調してくれるピアノもあります。そういったものを上手に使ってみましょう。